※本記事は2026年8月21日時点の情報をもとにしています。
資料づくりで時間を取られるのは、PowerPointの装飾だけではありません。
複数の資料を読み、必要な情報を探し、内容を比較し、根拠を確認し、伝わる順番に並べる。実際には、この「スライドを作る前の作業」に多くの時間がかかります。
この一連の作業をまとめて効率化できるのが、Googleの「Gemini Notebook」です。
以前は「NotebookLM」という名称でしたが、Googleは2026年7月16日に「Gemini Notebook」へ名称を変更しました。サービス自体は引き続き独立した研究・学習支援ツールで、選んだ資料の分析に加え、Web上の情報源の探索、スライド作成、データ分析、各種ファイルの生成まで扱えるようになっています。
ただし、「調べものから完成資料まで、無料で全部丸投げできる」と考えるのは正確ではありません。
Gemini Notebookの本当の強みは、信頼する情報源を自分で選び、その内容を出典付きで理解し、整理し、資料のたたき台へ変換できることです。

Gemini Notebookとは

Googleの公式発表によると、Gemini Notebookは、以前「NotebookLM」と呼ばれていたサービスの新しい名称です。名前は変わりましたが、独立したサービスとして提供されています。
PDFやWebページ、Googleドキュメントなどの資料を読み込ませ、その内容について質問できるAIリサーチツールです。通常のノートブック内のチャットでは、選択した資料をもとに回答が生成されます。回答中の引用を開けば、根拠になった箇所へ戻って確認できます。
読み込める主な情報源は、次のとおりです。
- PDF、Word、PowerPoint、CSV、テキスト、Markdown、ePub
- Googleドキュメント、Googleスライド、Googleスプレッドシート
- Webページ、画像、音声
- 字幕が公開されているYouTube動画
- Geminiの会話
ただし、元資料がそのまま完全に取り込まれるとは限りません。対応する情報源についての公式ヘルプでは、Webページから取り込まれるのは基本的に本文テキストで、埋め込み動画、画像、リンク先のページまでは対象にならないと説明されています。YouTube動画も、映像そのものではなく字幕のテキストが情報源になります。
また、Googleドキュメントやスライドの脚注・コメントが取り込まれない場合もあります。読み込ませたファイルと、AIが実際に参照できる内容は同じとは限らない点に注意しましょう。
Gemini Notebookでできること

複数の資料を出典付きで読み解く
Gemini Notebookの基本となるのが、読み込んだ資料に対する質問です。単純な要約だけでなく、次のような作業に向いています。
- 複数資料に共通する結論を整理する
- 資料ごとの主張や数値の違いを比較する
- 特定のテーマに関係する部分だけを抜き出す
- 長い報告書から判断材料と注意点を抽出する
- 出来事や制度変更を時系列で並べる
たとえば、3社分の提案書を読み込ませて、「費用」「対応範囲」「契約条件」「導入後の負担」という同じ項目で比較させれば、資料を1つずつ開き直す手間を減らせます。
重要なのは、最初から「どれがおすすめですか」と聞かないことです。まず事実と違いを整理させ、その後に自分の条件を加えて判断させた方が、根拠と評価を分けて確認できます。
Webから情報源を探す
手元に資料がない状態から始めることもできます。
「Fast Research」では、調べたいテーマを入力すると、WebまたはGoogleドライブから関連する情報源を探し、内容を確認したうえでノートブックへ追加できます。
より広い調査が必要な場合は「Deep Research」を使い、多数のWebサイトを調べたレポートと、その調査で参照された情報源を取り込めます。公式ヘルプでは、Deep Researchが最大で数百のWebサイトを参照する場合があると案内されています。ただし、利用条件や回数にはアカウントによる違いがあります。
ここで大切なのは、検索結果を大量に集めることではありません。公的機関、開発元、企業の公式発表、原著論文などを優先し、公開日や対象条件を確認する。Gemini Notebookは情報収集を速くしてくれますが、どの資料を根拠にするかは人が決める必要があります。
スライドや学習コンテンツへ変換する
読み込んだ資料は、チャットで質問するだけでなく、Studio機能からスライド、レポート、マインドマップ、音声・動画による概要、インフォグラフィック、フラッシュカード、クイズなどへ変換できます。
スライド作成では、用途に応じて大きく2つの形式を選べます。
- Detailed Deck:スライドだけを読んでも内容が分かるように、説明を比較的詳しく載せる形式。メール添付や配布資料向き
- Presenter Slides:話し手が説明することを前提に、要点とビジュアルを中心にまとめる形式。会議やセミナー向き
対象読者、資料の長さ、言語、デザインの雰囲気、重点を置く内容などを指定でき、生成後はPDFまたはPowerPoint形式でダウンロードできます。
ただし、スライド作成の公式ヘルプでは、生成物に視覚的・事実上の誤りが含まれる可能性があることに加え、生成後の修正時には情報源が参照されないと説明されています。見た目を整えるための修正で文章や数値まで変わっていないか、元資料ともう一度照合しましょう。
Word・Excel・PowerPointなどを直接作る
Gemini Notebookには、チャットからダウンロード可能なファイルを作る機能も加わっています。Googleの公式発表では、次のような出力形式が案内されています。
- PDF、Word、Markdown、テキスト
- Excel、CSV、JSON
- PowerPoint
- PNG、SVG、JPG、GIF
コードを実行してデータを分析し、その結果を表やグラフ、レポートへまとめることも可能です。
ここは、Studioの「Slide Deck」と分けて考えると分かりやすいでしょう。Slide Deckは、選択した資料からスライドを作る専用機能です。一方、チャットからExcelやWordなどを直接作る機能は、対象プランやアカウントへ段階的に展開されています。
2026年7月16日時点の公式案内では、Google AI Ultraと対象のWorkspaceビジネス顧客で提供され、Google AI ProのWeb版には数週間かけて展開するとされていました。そのため、利用できる機能、回数、端末は、実際のアカウント画面で確認する必要があります。
資料作成を速くする実践手順

Gemini Notebookを効果的に使うには、いきなり「いい感じのスライドを作って」と頼むのではなく、調査と構成を先に固めます。
1. 目的と読者を決める
最初に、「誰が」「何を判断するための資料なのか」を決めます。
同じ情報でも、社内会議用、顧客説明用、初心者向け講座では、必要な説明量や言葉が異なります。「新しい制度を管理職へ5分で説明し、対応方針を決めてもらう」と決めれば、必要な情報と不要な情報を分けやすくなります。
2. 根拠にする資料を選ぶ
公式資料、一次データ、社内ルール、過去の議事録など、今回の判断に必要な資料だけを入れます。
Web検索を使う場合も、検索上位の記事を無条件で追加せず、発信元、公開日、対象地域、対象プランなどを確認します。古い資料と新しい資料が混在している場合は、どちらが現在有効なのかを明示しておきましょう。
3. 事実関係を先に整理する
いきなり文章やスライドを作らせる前に、資料の内容を整理します。最初の指示は、次のような形が使いやすいでしょう。
選択した資料だけを使い、結論、根拠、注意点、資料間の相違を整理してください。数値、日付、固有名詞には出典を付け、資料から確認できない点は「不明」としてください。
ここで出典を開き、重要な数値や条件を確認します。資料同士で内容が食い違っている場合は、AIに無理に結論を出させず、「どこが異なるのか」「発表時期や対象条件が違うのか」を整理します。
4. 構成だけを先に作る
事実関係を確認したら、スライドや文書の構成案を作ります。
初心者向けの5分説明用として、6枚のスライド構成を作ってください。1枚につき1つの主張とし、表紙、課題、要点、注意点、まとめの順にしてください。出典にない数値や事例は追加しないでください。
この段階では、まだデザインを作らせません。構成を先に確認すれば、必要な説明の抜け、内容の重複、結論の分かりにくさを生成前に直せます。
5. 用途に合った形式で生成する
発表用ならPresenter Slides、配布用ならDetailed Deckを選びます。比較結果を加工したい場合はExcel、提出用の報告書ならWordやPDF、再利用するデータならCSVなど、後工程に合う形式を選びます。
生成後に手直しする前提で、最初から完璧なデザインを求めすぎないことも大切です。ただし、修正を重ねるほど内容が元資料から離れる可能性があるため、文章や数値を変更した場合は再確認します。
6. 最後に人が検証する
完成前に、少なくとも次の項目を確認します。
- 数値、単位、日付、固有名詞が元資料と一致しているか
- 出典が本当にその主張を支えているか
- 古い情報と現在の情報が混ざっていないか
- 資料にない断定や因果関係が加わっていないか
- 画像、図表、日本語表記に不自然な部分がないか
- PowerPointやExcelで必要な編集ができる状態か
Gemini Notebookは調査と初稿作成を速くしますが、提出責任まで引き受けてくれるわけではありません。
出典付きでも正しいとは限らない

Gemini Notebookの出典表示は、回答の正しさを保証するマークではありません。出典は、「その回答がどこを根拠にしているか」を確認するための入口です。
元資料自体が古い、誤っている、対象条件が違う場合、出典付きでも結論は正しくなりません。また、AIが資料の一部を読み違えたり、複数の情報を不適切に結び付けたりする可能性もあります。
Googleも、Gemini Notebookの回答や生成スライドには、事実上または視覚上の誤りが含まれる可能性があると案内しています。
確認するときは、次の順で見ると整理しやすくなります。
- 情報を正式に発表する立場の資料か
- 公開日や更新日は新しいか
- 国、地域、プラン、対象者などの条件が一致するか
- 引用箇所が本当にその主張を支えているか
- 重要な数値や結論は原文でも確認したか
特に、契約、医療、法律、金融、採用、経営判断などに使う場合は、引用元の原文まで戻って確認する必要があります。
機密情報と著作権にも注意する

Gemini Notebookのプライバシーに関する公式ヘルプでは、フィードバックを送信しない限り、入力した内容はGemini Notebookの学習に使われないと説明されています。
一方、個人アカウントからフィードバックを送信した場合は、質問、アップロードした資料、生成結果を含む文脈が確認対象になることがあります。Workspaceや教育機関向けアカウントでは、アップロード、質問、回答は人による確認やAIモデルの学習に使われないと案内されています。
それでも、次のような情報を無条件で入れるべきではありません。
- 顧客や社員の個人情報
- 未公開の契約書や経営資料
- パスワード、APIキー、認証情報
- 公開権限のない社内資料
- 利用許諾のない書籍や有料コンテンツ
「学習に使われない」という説明と、「何を入れても安全」という判断は別です。会社の情報を扱う場合は、組織のAI利用規程、契約プラン、共有範囲を確認してから使用しましょう。
著作権にも注意が必要です。自分で読むために資料を追加できることと、生成した要約やスライドを社外へ公開・配布できることは同じではありません。他者の文章や図表、画像を利用する場合は、利用条件と必要な許諾を確認してください。
まとめ|Gemini Notebookは「資料を確かめながら形にする道具」

Gemini Notebookは、資料づくりを自動で完成させる魔法のツールではありません。
強みは、信頼できる資料を集め、出典付きで読み解き、構成を整え、スライドや表、文書のたたき台へ変換できることです。
最初は、信頼できる資料を2〜3件だけ入れ、内容の共通点と相違点を出典付きで整理させてみる。その結果を確認してから、5〜6枚のスライドへ変換する。この順番なら、機能をすべて覚えなくても実用性を体感できます。
AIに任せるのは、情報を探し、並べ、初稿を作るところまで。
どの情報を信頼し、何を伝え、最終的に公開・提出するかは、人が判断する。 この役割分担を守ることが、Gemini Notebookを長く安全に使うための基本です。


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